なぜ子猫に予防接種と避妊・去勢が必要なのか?
生後間もない子猫は免疫力が安定しておらず、ウイルス感染のリスクが非常に高い時期です。飼い主が適切な時期に対策を講じなければ、将来深刻な病気に発展する恐れがあります。特に、猫ヘルペスウイルス、カリシウイルス、汎白血球減少症(パルボウイルス)などは感染力が強く、重症化しやすいため注意が必要です。
また、避妊・去勢手術のタイミングを逃すと、望まぬ繁殖や発情期のストレスによる問題行動、泌尿器系疾患のリスクが高まります。予防接種と避妊・去勢は、単なる選択肢ではなく、健康な成長を支える基盤となるケアです。
予防接種はいつから始めるべきか?
一般的に、子猫の初回ワクチン接種は生後6〜8週目から開始するのが理想とされています。母猫から受け継いだ免疫が減退し始めるこの時期に、外部からのウイルスに備える必要があります。
- 生後6〜8週:3種混合ワクチン(FVRCP)1回目
- 生後9〜11週:FVRCP 2回目+猫白血病ワクチン(必要に応じて)
- 生後12〜14週:FVRCP 3回目+狂犬病ワクチン
- 生後12ヶ月:追加ブースター接種
FVRCPは子猫の基本的な感染症を防ぐ三種混合ワクチンで、定期的に打つことで免疫効果を維持できます。特に初年度は3回以上の接種が推奨されます。
避妊・去勢手術のベストタイミングとは?
日本国内の動物病院では、生後4〜6ヶ月頃を推奨するケースが多く見られます。この時期は性成熟の直前であり、術後の回復も早く、副作用も比較的少ないのが特徴です。
雄猫は睾丸が完全に下りきる前の手術が望ましく、雌猫は初回発情の前に手術することで乳腺腫瘍のリスクが大幅に低減されると報告されています。また、家庭内飼育であっても、未避妊・未去勢のまま放置すると発情によるストレスや問題行動が増加します。
主な予防接種とその目的
ワクチン名 | 予防対象疾患 | 接種タイミング |
---|---|---|
FVRCP | 猫ヘルペス・カリシ・パルボ | 生後6〜14週に3回 |
FeLV | 猫白血病ウイルス | 生後9週以降(屋外飼育や多頭飼育のみ) |
狂犬病 | 狂犬病 | 生後12週以降(自治体により義務) |
猫白血病ワクチンはすべての猫に必要ではなく、外出機会が多い猫や、多頭飼い環境にある場合に限って検討されます。
初年度以降の接種スケジュールは?
初年度で予防接種を完了した後も、定期的なブースター接種が必要です。これは免疫力の維持と、抗体の低下に備えるための重要な管理です。
- FVRCP:1〜3年ごとに再接種(個体差あり)
- 狂犬病ワクチン:1〜3年ごと(自治体により異なる)
接種頻度や内容は、生活環境や健康状態を考慮して、獣医師と相談のうえで最適化することが推奨されます。
避妊・去勢のメリットはどこにある?
避妊・去勢手術には、単なる繁殖制御以上の健康メリットが存在します。
- 雌猫:乳腺腫瘍、子宮蓄膿症の予防
- 雄猫:前立腺疾患、精巣腫瘍の予防
- 共通:発情によるマーキング、鳴き声、攻撃性の抑制
さらに、地域猫の過密や野良猫問題への抑止効果もあり、飼い主としての社会的責任を果たすことにもつながります。
既に接種時期を過ぎた子猫はどうする?
保護猫や譲渡猫など、過去のワクチン履歴が不明な場合は、ゼロからワクチンプログラムを再スタートするのが安全です。
通常、初回接種から3〜4週間の間隔で2〜3回の追加接種を行い、以降は年1回のブースターで免疫を維持します。必要に応じて抗体検査を行うことで、過去の接種歴を間接的に推定することも可能です。
ワクチン後に副反応が出た場合の対応
猫にとってワクチンは概ね安全ですが、稀に軽度の副反応が出る場合があります。
- 接種部位の腫れや痛み
- 軽度の発熱や倦怠感
- 食欲不振や嘔吐、アレルギー反応(稀)
呼吸困難や顔の腫れなどの急性症状が出た場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。早期対応が猫の命を救うケースもあります。
手術後のケアはどう行う?
避妊・去勢手術後は、感染予防と回復促進のためのアフターケアが不可欠です。
- エリザベスカラーで舐め防止
- 激しい運動の制限と静かな環境の確保
- 食欲と排便のモニタリング
- 縫合部の確認と異常時の通院
雌猫は1週間程度、雄猫は3〜5日間の安静が理想です。この期間は猫の行動を注意深く観察し、無理な動きを避けましょう。
完全室内飼いの猫にもワクチンは必要か?
「室内飼いだから大丈夫」と考えるのは危険です。人間の衣類や靴底を介してウイルスが持ち込まれることは十分にありえます。特にパルボウイルスは空気感染の可能性もあり、室内でも感染リスクは存在します。
そのため、完全室内飼いであっても基本的な予防接種は必須です。
日本国内での費用相場はどのくらい?
地域や動物病院によって差はあるものの、おおよその目安は以下の通りです(すべて税込、日本円)。
- 3種混合ワクチン(FVRCP):1回あたり3,000〜6,000円
- 狂犬病ワクチン:2,000〜4,000円(自治体によっては無料)
- 雄猫の去勢手術:10,000〜18,000円
- 雌猫の避妊手術:20,000〜30,000円
市区町村の助成制度や保護団体との連携キャンペーンを利用することで、費用を大幅に抑えることが可能です。詳細は各自治体や獣医師会の公式サイトで確認しましょう。
まとめ:子猫の健康管理は「タイミング」が鍵
- 生後6週から予防接種を開始、3回完了が目安
- 生後4〜6ヶ月で避妊・去勢を検討
- その後は年1回のブースターで免疫を維持
- 完全室内飼いでも予防接種は必要
- 異常反応時はすぐに獣医に相談
初期の健康管理は、猫の一生にわたるウェルビーイングを左右します。「まだ大丈夫」ではなく、「今やるべきこと」を確実に実施することが、飼い主としての最大の責任です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の健康状態に応じた判断は必ず獣医師にご相談ください。